佐古さんインタビュー(後半)
(以下すべて佐古さんのお話です。)
子供たちに伝えていきたいこと
2002年にいすゞをやめたときに、今後は日本代表を引退して、講演活動やクリニックを通して子供達に夢の実現をサポートする時間をつくろうと思いました。選手以外の活動をしやすくする為に設立したのがZON(ゾン)株式会社です。
今後、子供たちに伝えていきたいことは自分がこれまでバスケットボールを通じて経験したことですが、それはバスケットボールのプレーについてのことばかりではありません。
例えば、礼儀作法に始まり、「自分一人でできることは少ない」ということや「環境に順応することも必要性」などなど細かいことを上げればキリがありません。
特にプロ目指している子供たちには「バスケットボールを頑張るだけではプロ選手にはなれない」ということも伝えたいと思っています。
プロを経験した自分の役割について
プロになるための動機は人それぞれでよいと思います。「有名になりたい」「お金持ちになりたい」「女の子にモテたい」など何でもいいんです。
実際にプロ選手として活躍するには毎日の練習や厳しいトレーニングなどを行わなくてはなりません。プロ選手として、みんなの前でスポットライトを浴びるカッコイイ時間はたったの1割ほどです。
その1割の時間の為に泥臭いことを9割もしなくてはならない。それはここまでやるべきなのかな?と思うことばかりです。でも、自分がみんなに伝えたいのはその「1割のカッコイイ部分」です。
子供達の「夢をつなぐ」ために伝えるべきことは泥臭い9割のところではなくカッコイイ1割の部分だと思っています。泥臭い9割の部分は伝えることではなく、目指す過程で自分が経験する部分です。楽しさがあれば、夢はつないでいける。結局はプロになる過程でこの9割を学んでいくわけなので、あえて自分が伝えるべきではないと思っています。
自分はチャンスとやる気だけを伸ばしてあげたい。夢を繋ぐことができればチャンスは必ずやってきます、「夢は自分を捨てない、自分が夢を捨てている」みんなに必ず伝えていることです。夢を繋ぐ、それが自分の役割だと思っています。
経験が教えてくれること
自分はバスケットボールが特別うまいわけではないんです。クラブチームの試合で100点を取るのなんて当然できませんし、40点を取るためには40本くらいシュートを打たないといけない。
そういう意味では、プロとアマチュアは関係ありません。ただ僕はたくさんの場面で経験をしてきているので、バスケットボールに関してどの場面で何をしたらよいかということはよくわかっているつもりです。
だから確率の高いプレーができる。決して特別なことはしていない。経験をしてきたから出来ることなんです。決して佐古賢一は「特別ではない」ということを皆さんに知ってもらいたいんです。
PGとは?
勝つために必要なことを選択するのがPGの役割ではないでしょうか。バスケットボールに絶対の正解はありませんが、自分が考えるPGとは・・・・
- その時々の状況を見て、確率の高いプレーを明確にイメージができること。
- イメージしたプレーをする適任者を探せること。シュートを打つのは自分なのか、チームメイトなのか?ということです。そのためにはチームメイトの特徴をよく知っている必要があります。
- この2つのことをゲームの流れを読んで、瞬時に判断できること。
このようなことになります。人生にも共通する部分がありますよね。これから何が起きるのかわからない。でもやりたいことはある。後ろの反省を生かして、前の一歩を踏む。バスケットボールと人生の共通点はそんなところではないでしょうか。
人間力、一流と超一流の違い
皆、JBLやBJリーグで活躍する人間は一流のバスケットボールプレイヤーばかりです。一流と超一流の違いというのは、「人間力」の差にあると考えています。
超一流のプレイヤーになるには人間力を成長させることが大きなカギとなります。若手に必ず伝えていることがあるんです。それは、普段の行動から、バスケットボールとして考えるのではなく、人としてモノを考えるということが重要だということです。人として、自分がバッシングするようなことを自分がやっていないか?まずはそこからですよね。
プロとして、チームを引っ張る選手として、コートの上では演じることも時には必要です。いつも見られている立場なので、プロ選手として、尊敬される人間として振る舞うことは必要です。
特にPGは、自分のコールを信じて選手に動いてもらう必要があります。そのコールを信じてプレーした結果、うまくいかないこともあるかもしれません。だからこそ、それで負けたら仕方がないと思ってもらえるほどの信頼感がなければPGは務まりません。
そのためには普段から選手として以前に、人として信頼され、尊敬されている必要があります。ですから人間力を高めるということが大切だと考えています。
でもいつも演じる必要はありません。それでは僕も胃に穴が開いてしまいますからね(笑)お酒の席では、「人間・佐古賢一」として、肩を組み、仲間として、友人として素の自分で気取らず付き合いたいですね。気取るのは大嫌いなんです。本当はおちゃらけた性格なので(笑)